2011年12月26日
想像力と創造力
工業デザインの先駆者のひとり柳宗理さんが25日になくなった。
96歳でした。お会いしたことは一度もなかったのですが、
デザインに関する本で柳さんの人物像や、デザインした商品などを
知っている程度。
その程度なんだけど、柳宗理さんのデザインアプローチの影響を
少しばかり受けている。使う立場、使う人の視点が大事なこと。
モノ作りをしていると、どうしても「作る立場」を優先しがち
ですが、モノはあくまでも使う人たちの幸せにつながるように。
デザインに関係なく、どんな仕事でも「想像力」と「創造力」は
大事です。
想像力は「イメージすること」、創造力はそのイメージを
現実的に「作り上げていくこと」。このどちらにも欠かせないのが
情熱だ。たいしたことのないアイデアも、熱に取り付かれたように
今より少しでも「良くしたい」という思いがあれば、想像力や
創造力が湧き出ると改めて思ったクリスマスの夜でした。
96歳でした。お会いしたことは一度もなかったのですが、
デザインに関する本で柳さんの人物像や、デザインした商品などを
知っている程度。
その程度なんだけど、柳宗理さんのデザインアプローチの影響を
少しばかり受けている。使う立場、使う人の視点が大事なこと。
モノ作りをしていると、どうしても「作る立場」を優先しがち
ですが、モノはあくまでも使う人たちの幸せにつながるように。
デザインに関係なく、どんな仕事でも「想像力」と「創造力」は
大事です。
想像力は「イメージすること」、創造力はそのイメージを
現実的に「作り上げていくこと」。このどちらにも欠かせないのが
情熱だ。たいしたことのないアイデアも、熱に取り付かれたように
今より少しでも「良くしたい」という思いがあれば、想像力や
創造力が湧き出ると改めて思ったクリスマスの夜でした。
2011年12月08日
デザインするときの「ものさし」
「よろこんでもらう」を
確かめるモノサシです。
☆じぶんと仲間
☆取引先と関係者
☆お客さまとその周辺
☆社会と歴史
それぞれの☆の横にある人たちが、
「よろこんでくれる」と思えたら、
☆を★に塗りつぶします。
★★★★ の仕事は、がんばってやるべきです。
★★★☆ の場合は、まだ検討したいところです。
☆☆★★ だと、長続きしないと思われます。
☆★★★ これは、うまくいきません。
と、いうふうに使います。
(グッドデザイン審査委員長深澤氏のコメントより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、僕がデザインするときのモノサシとして、
☆新規性ー新しい価値
☆機能性ー機能的に優れている
☆使用性ー使いやすい
☆品質性ー高品質である
☆美観性ー外観が美しい
☆公共性ーより多くに有用
☆時代性ー今の時代の価値観に適応
☆独自性ー他の類似品との差異が明らか
☆有用性ー役立つ
☆適材性ーその素材の適正
☆UD性ー誰でも使える
☆安全性ー安全である
☆互換性ーパーツ交換が容易
など、いくつかある項目で、☆から★になれるのが
どれだけあるだろうかと、ものさしを当ててみる。
いくつかの☆の中が真っ黒ではなく、まだ半分ぐらいしか
黒くない場合もありますが。
当事者は開発にのめりこんでると、客観的な目をもてと言っても
なかなか、冷静に客観的にはなりにくいけど、これから
取り組もうとする、あるいは今現在、仕掛けている事業計画や
商品開発は、いったい★の数がどうなっているかと、客観的に
見つめる(観察)ことも、熱中して没頭するのと同じぐらい
大事なデザインワークのひとつです。
2011年11月21日
エアーチャイナ航空のナイフやフォーク
この間、伊万里にやって来た長女からもらったプレゼントには
写真のようなエアーチャイナ航空の機内食用プラスティック製の
ナイフやフォークなどがあった。
見たとおりのいかにも安いチープなプラ製品なんですが
よく見ると指が触る部分には、すべりにくいようにと
エンボス加工がしてあり、安いわりには、少しでも
使い易いようにと、気をつかっているようです。
使う相手への「気くばり」がデザインには不可欠なんですが
それにしても、よくもこんなに薄く作ったもんだと感心させ
られるエアーチャイナ航空のナイフやフォーク。
必要最小限ではなく、「必要最・最・最小限」な世界がここに
は存在していて、これを見ていたら「断・捨・離」の言葉が
浮かんできた。
2011年11月15日
それぞれの形には意味がある
ひさしぶりの今日のブログは食事のときに使うフォークを
例にして話したいと思います。
上の写真には4本のフォークがありますが、食事のときに
フォークをどれにしようかと迷わずに選ぶのが右端のタイプ。
フォルムが気に入ってるのは左端のタイプで、直線部がなく
全体にやさしい印象を受け、金属の冷たさを感じさせない
やわらかなデザインをしたのは柳宗理さん。
今まで一番よく使っていて、たまに使うのが真ん中の2本。
シンプルなスタイルで、合理的なコンセプトだと、デザインは
こうなるよというお手本のような形状です。
しかしながら、右端のフォークが登場してからは、出番がめっきり
減ってきて、出番が少なくなったには理由がちゃんとある。
フォークの櫛の部分を見ると右端の方が細く長い。そして両サイドの
櫛も右端の方が細くなってるから、刺すときの抵抗力(ストレス)が
より少ない。このわずかな櫛の太さの違いが、使う(刺す)ときに
大きな差になっています。まさしくディテールこそ大事です。
そして、ホールド部は右端の方は下にいくほど幅広で、使うときの
安定バランスが優れている。
デザインの形状を決める前には、素材の特性や技術、生産性などの
作る側の条件を考慮するだけでなく、モノの在り方へのこだわりを
考えてこそ形の意味があり、使う時の「ストレス」をより少なく
するのもデザインの役割りだと思います。
2011年09月20日
ベンツ大型トラックのデザイン
(写真はアクシスの記事より)
車のベンツと聞けば、高級乗用車の代名詞になってるけど
同社は世界最大のトラックメーカーだと、購読している10月号の
デザイン誌・アクシスの記事に書いてある。
メガトラック・アクトロスのキャブ全面のU字のような、V字の
ようなラジエターグリルのデザインは、一見すると、ただの
横ラインが5本ほど並んでいるにしか見えないが、一番下の
V字から上の水平線のルーバーまでは微妙な角度で
それぞれ違う表情で、全体として静かな動きを感じさせ
信頼感あふれる堂々としたデザインになってます。
フロントの静かな動きのデザインが、力強さと信頼性を
表し、マークのスリー・ポンテッドスターは大型トラックの
スケールに合わせて大きく、ベンツのベンツらしい堂々とした
デザインのDNAは、トラックにも受け継がれているね。
2011年09月15日
島根・出西窯のデザインは良い
同じ焼き物とはいえ、伊万里や有田焼の磁器ではなく
備前や美濃、九谷ほどの知名度はないようですが
陶器の出西窯はデザイン関係の書籍にはよく登場する。
日本の民藝運動を代表する柳宗悦氏らの考えに共感して
器を作っている島根県の出西窯(しゅっさいがま)は
一見の価値がありま。
ここでぼくが説明するより、上の青文字をクリックして
出西窯のホームページを見たほうが早いね。
なにか新しい食器を考えたら、あるいは、こんな器が○○○を
するにはいいと思ったら、試しに作っては作った本人が
自分で使ってみることです。
器を作る人自らが、食卓で使いんで、洗って、拭いて、
食器棚に収納するまで、器の使いやすさを自分自身で
検証してこそ、使い勝手の良さや不具合がわかるもの。
売れない原因を探すよりも、食器を作る人は、作れるという
特権を充分に楽しんでこそ、良い食器が生まれると思う。
2011年09月15日
やさしいパン@佐世保・草加家
この間のブログで紹介した、佐世保の草加家さんは
お菓子だけでなく、パンもこだわって作っている。
おいしそうなパンの写真に、おいしいなんて文字はなく
「コックスさんのやさしいぱん」と書いている。
ロゴデザインもコンセプトに合ってバランスがよい。
そうか、体にとってはおいしいじゃなく、体にやさしい
ほうが体にはいい事なんだと、改めて気付かされた。
はがきサイズぐらいのパンフレットには、やさしい
パンの作り方と、いくつかのやさしいパンが紹介してあり
「やさしいぱんの良さ」をきちんと伝えている。
商品を作ることと、その良さを理解してもらうための
価値を伝えるツール(パンフレットなど)も大事な商品。
良質な商品には、パンフレットも良質にできている。
やさしいぱんの表紙には、お店は漢字の草加家でなく
「そうかや」とひらがなでやさしくなっている。
2011年09月07日
工作は、「工夫して」作ること
使い始めて30年近くになる木のお盆というか大皿。
直径が35cmぐらいで、素材は松の木。
片手でも持てるようにと、縁周りの内側がほんの少しだけ
凹んでいる。この「ほんの少し」というのが普段使いの
日用品や家具には、とても大きな価値があります。
他社製品よりも、より安く作ることを優先すると
「ほんの少しの良さ」は生まれません。良さを考えるよりも
安く作るにはどうするかしか考えないから。
伝統的地場産業や陶磁器産業には楽な時代ではないけれど
手作りならではの「良さ」を考えて、消費されるよりも
愛用されるモノ作りを工夫したほうがいいと思います。
場合によっては、「無用の用」ともいえる遊びの要素や
余裕など、一見すると無駄のようなのも取り入れて
日用品の中にカタチにしてみるのも面白いと思う。
工作の意味を辞書で調べたら、
・簡単な器物を作ること。
・土木・建築・製造などの工事や作業。
などがあり、また別な意味として
・ある目的を達するために、前もって他に働きかけたり
計画をめぐらしたりして下準備すること。
例文=「陰にまわって―する」「和平―」
こうなってくると、デザイナーは工作員に近いね。
2011年08月08日
食器の買い方選び方
休日に机の回りの雑誌などを整理したり、整頓してますが
いつも身近に見えるところに置いている本がいくつかあり
「食器の買い方選び方」は、すぐそばに置いてます。
新しいデザインを考えるとき、たとえそれが食器なくても
気分転換にと、どこを読むでもなく読んでます。
著者の秋岡芳夫さんは工業デザイナーでオートバイから
竹とんぼまでデザインして、たまにNHKに出演しては
デザインをわかりやすく話していた人で、事務所や自宅に
お邪魔しては、秋岡さんのデザイン話を聞いてました。
「食器の買い方選び方」に限らず本を読んでいると、前には
気付かなかった所を見つけるなど、本を読む時の心情によって
読んでいても見えたり、見えなかったりするので、この本は
デザインを考える時や迷ったとき、いつでも読めるように
そばに置いて、私のデザイン教科書になってます。
夏休みに入り、「デザイン散歩+」もしばらくお休みします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
2011年07月06日
冷静と情熱のあいだ
まったく見てはいない映画なんで、タイトルだけを借用する
には、ちょっと気がひけるのですが。
「冷静と情熱のあいだ」というタイトルを見た時に
デザイナーの場合は逆になるぜと思い、冷静と情熱の
「間」でなく、「あいだ」とはうまい表現です。
似ているのは二つの漢字だけなんですが、その位置の順番が
デザイナーの仕事では、「情熱と冷静のあいだ」になり
打合せをしている時に、このデザインをやってやるぜ!と、
相手に見えない机の下で手には「力こぶ」のスイッチオン。
熱くなったデザインが先走りしないように、ある時には
自分の考えたデザインを冷静なもうひとりの自分や客観的な
別の自分が見つめます。
客観的にもうひとりの自分が見つめるのは、客観的ですから
ひとりのお客として、自分のデザインを見ることになるけど
お客の自分は、考えた自分の苦労やアイデアのプロセスを一番
理解している自分なのですが、そんな状況には知らんぷりして
ひとりのお客として冷静に見ては、また情熱の体温を熱くして
鉛筆を持ってスケッチブックにデザインを描くしかない。
クールビズのように、一見涼しげにさらっといるようでも
デザイン(自分の仕事)への情熱はアッチィチィにせんばね。
には、ちょっと気がひけるのですが。
「冷静と情熱のあいだ」というタイトルを見た時に
デザイナーの場合は逆になるぜと思い、冷静と情熱の
「間」でなく、「あいだ」とはうまい表現です。
似ているのは二つの漢字だけなんですが、その位置の順番が
デザイナーの仕事では、「情熱と冷静のあいだ」になり
打合せをしている時に、このデザインをやってやるぜ!と、
相手に見えない机の下で手には「力こぶ」のスイッチオン。
熱くなったデザインが先走りしないように、ある時には
自分の考えたデザインを冷静なもうひとりの自分や客観的な
別の自分が見つめます。
客観的にもうひとりの自分が見つめるのは、客観的ですから
ひとりのお客として、自分のデザインを見ることになるけど
お客の自分は、考えた自分の苦労やアイデアのプロセスを一番
理解している自分なのですが、そんな状況には知らんぷりして
ひとりのお客として冷静に見ては、また情熱の体温を熱くして
鉛筆を持ってスケッチブックにデザインを描くしかない。
クールビズのように、一見涼しげにさらっといるようでも
デザイン(自分の仕事)への情熱はアッチィチィにせんばね。
2011年07月02日
自我自賛・自己反省・自問自答
なにか新しいデザインを考えていると、「お~、これはいいな」と
自分の出したアイデアに、もうひとりの自分がほめてくれたり。
反対に、「え~、そのアイデアはちょっとどうかな」と、のぼせすぎ
ないよう、また別の自分がちょっとブレーキをかけてくれる。
デザインを考えているのは、自分ひとりなんだけど、造形にこだわる
もうひとりがいたり、そのアイデアに満足しない別の自分がいたり
それじゃ普通だから、もっと工夫がいるねなんて、励してくれる
また別の自分もいたりする。
こうやって、アイデアの自我自賛や自己反省をいくどとなく
くりかえしながら、新しいデザインに自問自答する時間が
つきまとうことになります。
そんな自問自答するのを手助けしてくれるのが、紙と鉛筆です。
デザインスケッチを描くときに使うのだけど、実は自問自答して
向こうの先にある見えないものを見つけようとするために描いて
別の自分から「いいね」と、共感してもらうことなんだと。
2011年07月01日
デザイン専門誌のアクシス8月号
毎月1日に発行しているデザイン雑誌のアクシス。
今日の7月1日に届いた8月号の特集は、
「今、廃棄物と向き合う」。
記事をめくっていたらブラジルで、プルタブを使った
バッグやアクセサリーを作っているのが紹介されて
どれも、廃棄物からとは思えないほどの質になっている。
それもそのはず、手工芸職人グループが作ってます。
2011年06月27日
バランスの良い手作りの木のへら
武雄市若木の「くぬぎの杜」と看板がある所で、家具作り
木工塾に通ってから知ったのが、同じ敷地にある
和樹(なごみのき)さんのヘラや器などの木工品です。
鍋などをかきまぜるヘラは右利き用が一般的ですが、ここ
では、「左利き用」のヘラも作っています。
こういうのが、手作りならではの良さですね。
ヘラは手に「握る」モノ。
握り具合を左右するのは「太さ」と「握りの形状」なので
自分の指の長さや手の握力などに合う太さだと、使い心地が
良いでしょう。
そして、デザイン的には、写真のように手に握る棒の延長上に
ヘラの「重心」があるほうが、使い心地の決め手になると
思います。使い心地のキモの部分は「重心のバランス」です。
ヘラを握った感じで、心地の良さを判断しがちですが、実は
良いモノは「重心のバランス」が縁の下に隠れています。
2011年06月20日
使い心地と使い勝手
モノがあふれている時代になっていると、「使い勝手」の良さと
いう理由より、その人個人にとって「使い心地」の良さのほうが
どうも優先されるような気がします。
使い勝手の良さは言い換えれば、便利や機能のようなものですから
誰にとっても、あると便利とか役に立つという範疇になりますが
「使い心地」になると、心地が良いかあまり良くないって話になり
これはもう使う人個人、個々の判断に委ねられてしまいます。
酒器の盃で例えるなら、お酒を飲みやすい盃でなく、その盃で
お酒を飲んだら、より美味く飲めそうな気になる盃ですかね。
モノは作り手の「個人が感じる心地良さ」を、さらに追い求める
ことで、心地良い(=センス)モノに生まれ変わると思います。
2011年06月14日
商品は「なんのために」あるのか②
今日の記事は前回に書いた「本性」をもう少し書いて
みたいと思い、その続きになります。
うまく説明できないかもしれませんが、あまり気にしないで
さらっと流してもらえれば、ありがたいです。
「本性」ってのは他とは違う独自(差異)な「○○らしさ」じゃないかと
思ってます。新商品は3ヶ月や1年で作れても、お店や会社の
「らしさ」ってのは半年や1年そこらで根付かないでしょう。
大切なことをコツコツ続けていって10年ぐらいはかかるかな。
色彩、機能、特長などの属性について、ちゃんと説明ができても
そこの本性は伝えにくいものです。ですから、なおさらのこと
他とは違う、「○○らしさ」という本性が大事になります。
デザインをする場合、「いかに便利に」や、「いかに機能的に」
などのように、「いかに=HOW」を考えるので、属性に関わる
要素の周辺をあれこれいじり、時々はお化粧を変えるけど
大事なのは「根っ子」となる本性(らしさ)を創りだすことです。
今日の写真は、伊万里鍋島焼窯元・畑萬陶苑さんのマグカップ。
独自なルリ釉薬が誕生してから、20年以上になります。
2011年06月10日
商品はなんのためにあるのか
ぼくが住んでいる伊万里や隣りの有田は焼き物が有名なところで
伊万里焼や有田焼という「産地の名称」が焼き物についてます。
この名称が本質(本性)を表しているのかと思えば、むしろ
「属性のひとつ」にすぎないと思ってます。
歴史、様式、染付、色絵など美術工芸品から食器まで、幅広い
アイテムがあり、これが有田焼の本性ですと、一言で説明する
には門外漢のぼくにはむずかしいけれど、知名度は中高年層には
高くても、年齢が若くなるほど知名度も低いようです。
写真の白磁のコーヒーカップは、正真正銘の有田焼のカップ。
この商品は「コーヒーを飲むためのカップ」ですから、世の中に
数多く存在するコーヒーカップのひとつにすぎません。
値段が安いから、有名デザイナーがデザインしたから、可愛い
あるいは贈り物になど、商品を使う(買う)理由は人それぞれ。
ですから、商品は「なんのためにあるのか」と存在理由が明確に
なっていないと、商品価値に共感してくれるお客(市場)に
「価値」は伝わりにくい。あんまり「属性」に執着しこだわり
すぎるより、これから開発する商品は「なんのためにあるのか」
を、とことん突き詰めていくことが大事だと思います。
写真のコーヒーカップは「なんのための」あるのだろうか。
2011年05月26日
鍋島青磁のぐい呑
シトシトと降る雨をみると、どうやら伊万里も梅雨入りに
なったような空模様です。
最近になって、晩酌には日本酒をまたちびちび飲むようになり
高台がちょっと長い酒器で飲んでます。
ちょっと長い高台なので、ここに指をかけるには具合がいい。
高台の低い酒盃では、器の口縁あたりを持つことになるけど
ちょっと高台を長くすると、プロポーション変わると同時に
飲みやすく使い勝手も変わります。ほんのちょっとですが。
モノのデザインを考えるときに、構成している「要素」を
まずは分解してみるのも、ひとつの手だと思う。
酒盃なんだから、こうあるべきだと枠を決めつけないで
生活や食習慣も変わってきたのですから、枠を壊すんじゃなくて
酒盃に酒をつぐ、酒盃を手に持つ、口当たり具合、洗うときや
収納するシーンなど、酒盃を構成する「要素」と「環境」などを
分解して、じっくりと見直してみる。
新しいお酒の楽しみ方を発見するために、錆びついて頭の中や
眼をクリーニングするのに、「要素の分解」は必要ですね。
2011年05月02日
チョコのトレーには小さなハートが4つ
連休のあいだもテレビの画面に地震情報がでた瞬間に、大変だなと
いう想いが頭のなかに浮かび、被災地から遠い伊万里にいても
こころが落ち着かない日がまだまだ続きます。
復興にむけて少しづつ動き出したニュースには人の笑顔が出てきた。
そんな笑顔のうらには大きな荷物を背負っているのにと思うと
被害にあっていない者の役目は、ちゃんと仕事をしようと思う。
小さな花を眺めるだけで、ホッとして気分が少し軽くなるなど
たいしたことでなくても、ほんの少し役にたつことがあります。
「ほぉ~」と、関心したのが、写真の茶色いプラスティックトレー。
これは以前に、このブログで紹介したフェアートレードのチョコレートの
箱に入っているプラスティックトレーなんですが。
こういう所は目立たないから、こだわらないで丸や四角で凹凸をつけて
すませてしまうのに、わざわざ「ハート」のかたちにしている。
こんな小さな可愛い四つのハートをみると、四葉のクローバーじゃないが
「プチハッピー」な気分にしてくれます。
「目立たないから、こだわらない」じゃなく、たとえ見る人が少なくても
見たら楽しくなるように、細やかな配慮を感じる小さなハートです。
2011年03月19日
シンプルと単純は似ているけど
いつものように朝が来て、いつものようにトーストを焼いて食べている。
こんなごく普通の朝食が、ずいぶんと贅沢に思えるこの1週間です。
いつもの朝に使っている木のお皿は使いはじめて30年以上になり
あまり身近にあるせいか、ほとんど気にすることなく使っている。
工業デザイナーの師匠のような秋岡芳夫先生が主宰していた
「モノモノ」というグループの勉強会に参加していたときに見つけた。
真ん丸い形をしている木製のプレートで、毎日使ってますが
30年経っても、ぜんぜん飽きません。
お皿のサイズ加減、リムの幅、中の凹み具合、持ちやすさ、厚みや
収納性、重ねやすい、木目の美しさなど、プロポーション、木肌の色など
いろんな要素のバランスが気にいってます。
形が真ん丸だから、シンプルなデザインだと言えるかも知れないけれど
シンプルを日本語に訳すと、「簡単な」とか「単純な」の意味になりますが
道具として「理に適っている」ことも、シンプルな意味にもつながるのでは。
あるいは、カタチに無駄がないとか、カタチに無理がないとか。
材料を加工してモノを作る場合、無理な加工をして作ると、後になって
「ひずみ」が出てくる。ひずみという字は「歪」と書き、何事にも「ひずみ」は
あまり嬉しいものではありませんね。
商品の存在価値として、「理に適っている」ことは何だろうと探して
探し求めた「理」を「カタチ」に集約すると、意外なシンプルに出会うかも。
こんなごく普通の朝食が、ずいぶんと贅沢に思えるこの1週間です。
いつもの朝に使っている木のお皿は使いはじめて30年以上になり
あまり身近にあるせいか、ほとんど気にすることなく使っている。
工業デザイナーの師匠のような秋岡芳夫先生が主宰していた
「モノモノ」というグループの勉強会に参加していたときに見つけた。
真ん丸い形をしている木製のプレートで、毎日使ってますが
30年経っても、ぜんぜん飽きません。
お皿のサイズ加減、リムの幅、中の凹み具合、持ちやすさ、厚みや
収納性、重ねやすい、木目の美しさなど、プロポーション、木肌の色など
いろんな要素のバランスが気にいってます。
形が真ん丸だから、シンプルなデザインだと言えるかも知れないけれど
シンプルを日本語に訳すと、「簡単な」とか「単純な」の意味になりますが
道具として「理に適っている」ことも、シンプルな意味にもつながるのでは。
あるいは、カタチに無駄がないとか、カタチに無理がないとか。
材料を加工してモノを作る場合、無理な加工をして作ると、後になって
「ひずみ」が出てくる。ひずみという字は「歪」と書き、何事にも「ひずみ」は
あまり嬉しいものではありませんね。
商品の存在価値として、「理に適っている」ことは何だろうと探して
探し求めた「理」を「カタチ」に集約すると、意外なシンプルに出会うかも。
2011年02月25日
食器のデザインを考える⑤:デザインの仕様
前回に、すべりにくい飯碗のデザインをする場合に3つの方向性が
あると書いたけれど、もっといいのが出てくるかも知れませんが
まずは限られた時間内で出てきたアイデアを優先し「仮説の候補」を
選択してデザインワークを進めていきます。時間が勝負の分かれ目で
締め切りまでに間に合わないのは、ダメ~なんて野暮なことは
なくて、次のステップに進んでいても、後からもっと良いアイデアが
出てきたら、良い方を選択して進めていきます。
浮かんだアイデアを文字に書いたり、スケッチを描くのは、まだ
会えない、見えない「新しさ」に出会うための作業のひとつ。
これかなと感じたり、フィルターにかけて、「これだ」と出会うために
浮かんだデザインをスケッチに描いては、また描き直していきます。
頭のなかに浮かんだ「新しさ」を、実際にスケッチに描いてみると
「あれ~、ちょっと違うなぁ~」となったりするのは日常茶飯事。
この曲線よりも、少しゆるやかにした方がラインがいい感じになりそうと
思い浮かんでは、デザインスケッチを描いては、また直すのです。
そんなデザインワークを繰り返すと、必ず「新しさ」に出会える。
誰よりも一番最初に「新しさ」に出会う楽しみがあるので、出会うためには
こんな楽しい作業を繰り返すのです。一緒に好きな音楽を聴きながら。
そこで、今回のテーマの「すべりにくい飯碗」のデザインとしては。
=飯碗は毎日のように使う日常家庭の食器です。あまりにぎやかな
デザインよりは、たたずまいとして「控えめ」にすることを基本に
おいて考えてみる。ですから、飯碗のデザインコンセプトは「控えめ」。
料理が「花」なら、器は「葉」という感じでコンセプトを仮説します。
①段差タイプのデザイン案として
(a)指先が引っかかるよう、飯碗の側面にゆるやかな曲線の段差をつける。
飯碗の持ち方は人それぞれ。ですから、人指し指や中指を置く場所は
同じではないので、飯碗を横から見た場合、直線的な段差をつけるよりは
ゆるやかな曲線で段差をつけた方が対応できそう。
(b)指を置く高さも人それぞれなので、飯碗の中ほどにつける「中ライン」と
高台に近い低い位置につける「低ライン」、この中間に位置するような
「中低ライン」の3つを用意する。
(c)しかし、ひとつの飯碗に、3つの段差ラインがついたのでは、にぎやかに
なってしまうので、コンセプトの「控えめ」とならない。
(d)飯碗には、それぞれ中ラインタイプ、中低ラインタイプ、低ラインの
3種類を用意する。
(e)段差面で、指先が当たる所にザラついた仕上げ面をつける。
ザラついたラインの幅は2~3ミリ程度に。
と、すべりにくい飯碗のデザイン仕様が絞り込まれてきました。
ここでは、拡散したデザインを、絞り込んでいきます。
個人ひとりで考えていると、ひとりよがりな部分もかなりあるので
デザイン仕様を決める場合は、見直して点検することが肝心です。
ちなみに、今回の(a)のところに書いた「ゆるやかな曲線」なんてのは
言葉の響きは良さそうですが、曲線にすると、指を当てる位置決めが
不安定になり、いちいち飯碗を持つたびに、どの位置だったけと
位置を探すはめになる。これは感心しませんね。
そうならないためには、ゆるやかな曲線ではなく、横から見たら直線に
した方が探す手間もなくなりますね。
ひとつの飯碗タイプに段差ラインを3本つけて、ピッチは6ミリぐらい。
そして、指先が当たる部分のザラ付き面は、2ミリぐらいの幅に。
このぐらいが良さそうな気がすると思ったら、「仮説」を立ててみる。
「段差を直線の3本」と設定したので、次には3本の段差ラインが美しく
見えるフォルムを探すためにデザインスケッチを描きます。
段差をつけると釉薬がそこに溜まり、段差の役目が弱まりますから
釉薬の溜まり具合を想定しながら、段差の具合や形状、ピッチを検討。
フォルムに関係するサイズはどのぐらいにするかなど、まだまだ飯碗の
新しいデザインに出会う旅は続きますが、ここまで進んで来ましたから
あと1週間ぐらいで出会えるでしょう。
今週の月曜、5日目にはデザインが完成するでしょうとは書いたものの
まだ途中です。予定は未定になってしまいましたが、今週から始まった
スケッチを描かないデザインワークはこれでひとまず終了となります。
最後まで読んでもらいありがとうございます。
あると書いたけれど、もっといいのが出てくるかも知れませんが
まずは限られた時間内で出てきたアイデアを優先し「仮説の候補」を
選択してデザインワークを進めていきます。時間が勝負の分かれ目で
締め切りまでに間に合わないのは、ダメ~なんて野暮なことは
なくて、次のステップに進んでいても、後からもっと良いアイデアが
出てきたら、良い方を選択して進めていきます。
浮かんだアイデアを文字に書いたり、スケッチを描くのは、まだ
会えない、見えない「新しさ」に出会うための作業のひとつ。
これかなと感じたり、フィルターにかけて、「これだ」と出会うために
浮かんだデザインをスケッチに描いては、また描き直していきます。
頭のなかに浮かんだ「新しさ」を、実際にスケッチに描いてみると
「あれ~、ちょっと違うなぁ~」となったりするのは日常茶飯事。
この曲線よりも、少しゆるやかにした方がラインがいい感じになりそうと
思い浮かんでは、デザインスケッチを描いては、また直すのです。
そんなデザインワークを繰り返すと、必ず「新しさ」に出会える。
誰よりも一番最初に「新しさ」に出会う楽しみがあるので、出会うためには
こんな楽しい作業を繰り返すのです。一緒に好きな音楽を聴きながら。
そこで、今回のテーマの「すべりにくい飯碗」のデザインとしては。
=飯碗は毎日のように使う日常家庭の食器です。あまりにぎやかな
デザインよりは、たたずまいとして「控えめ」にすることを基本に
おいて考えてみる。ですから、飯碗のデザインコンセプトは「控えめ」。
料理が「花」なら、器は「葉」という感じでコンセプトを仮説します。
①段差タイプのデザイン案として
(a)指先が引っかかるよう、飯碗の側面にゆるやかな曲線の段差をつける。
飯碗の持ち方は人それぞれ。ですから、人指し指や中指を置く場所は
同じではないので、飯碗を横から見た場合、直線的な段差をつけるよりは
ゆるやかな曲線で段差をつけた方が対応できそう。
(b)指を置く高さも人それぞれなので、飯碗の中ほどにつける「中ライン」と
高台に近い低い位置につける「低ライン」、この中間に位置するような
「中低ライン」の3つを用意する。
(c)しかし、ひとつの飯碗に、3つの段差ラインがついたのでは、にぎやかに
なってしまうので、コンセプトの「控えめ」とならない。
(d)飯碗には、それぞれ中ラインタイプ、中低ラインタイプ、低ラインの
3種類を用意する。
(e)段差面で、指先が当たる所にザラついた仕上げ面をつける。
ザラついたラインの幅は2~3ミリ程度に。
と、すべりにくい飯碗のデザイン仕様が絞り込まれてきました。
ここでは、拡散したデザインを、絞り込んでいきます。
個人ひとりで考えていると、ひとりよがりな部分もかなりあるので
デザイン仕様を決める場合は、見直して点検することが肝心です。
ちなみに、今回の(a)のところに書いた「ゆるやかな曲線」なんてのは
言葉の響きは良さそうですが、曲線にすると、指を当てる位置決めが
不安定になり、いちいち飯碗を持つたびに、どの位置だったけと
位置を探すはめになる。これは感心しませんね。
そうならないためには、ゆるやかな曲線ではなく、横から見たら直線に
した方が探す手間もなくなりますね。
ひとつの飯碗タイプに段差ラインを3本つけて、ピッチは6ミリぐらい。
そして、指先が当たる部分のザラ付き面は、2ミリぐらいの幅に。
このぐらいが良さそうな気がすると思ったら、「仮説」を立ててみる。
「段差を直線の3本」と設定したので、次には3本の段差ラインが美しく
見えるフォルムを探すためにデザインスケッチを描きます。
段差をつけると釉薬がそこに溜まり、段差の役目が弱まりますから
釉薬の溜まり具合を想定しながら、段差の具合や形状、ピッチを検討。
フォルムに関係するサイズはどのぐらいにするかなど、まだまだ飯碗の
新しいデザインに出会う旅は続きますが、ここまで進んで来ましたから
あと1週間ぐらいで出会えるでしょう。
今週の月曜、5日目にはデザインが完成するでしょうとは書いたものの
まだ途中です。予定は未定になってしまいましたが、今週から始まった
スケッチを描かないデザインワークはこれでひとまず終了となります。
最後まで読んでもらいありがとうございます。