前回に、すべりにくい飯碗のデザインをする場合に3つの方向性が
あると書いたけれど、もっといいのが出てくるかも知れませんが
まずは限られた時間内で出てきたアイデアを優先し「仮説の候補」を
選択してデザインワークを進めていきます。時間が勝負の分かれ目で
締め切りまでに間に合わないのは、ダメ~なんて野暮なことは
なくて、次のステップに進んでいても、後からもっと良いアイデアが
出てきたら、良い方を選択して進めていきます。
浮かんだアイデアを文字に書いたり、スケッチを描くのは、まだ
会えない、見えない「新しさ」に出会うための作業のひとつ。
これかなと感じたり、フィルターにかけて、「これだ」と出会うために
浮かんだデザインをスケッチに描いては、また描き直していきます。
頭のなかに浮かんだ「新しさ」を、実際にスケッチに描いてみると
「あれ~、ちょっと違うなぁ~」となったりするのは日常茶飯事。
この曲線よりも、少しゆるやかにした方がラインがいい感じになりそうと
思い浮かんでは、デザインスケッチを描いては、また直すのです。
そんなデザインワークを繰り返すと、必ず「新しさ」に出会える。
誰よりも一番最初に「新しさ」に出会う楽しみがあるので、出会うためには
こんな楽しい作業を繰り返すのです。一緒に好きな音楽を聴きながら。
そこで、今回のテーマの「すべりにくい飯碗」のデザインとしては。
=飯碗は毎日のように使う日常家庭の食器です。あまりにぎやかな
デザインよりは、たたずまいとして「控えめ」にすることを基本に
おいて考えてみる。ですから、飯碗のデザインコンセプトは「控えめ」。
料理が「花」なら、器は「葉」という感じでコンセプトを仮説します。
①段差タイプのデザイン案として
(a)指先が引っかかるよう、飯碗の側面にゆるやかな曲線の段差をつける。
飯碗の持ち方は人それぞれ。ですから、人指し指や中指を置く場所は
同じではないので、飯碗を横から見た場合、直線的な段差をつけるよりは
ゆるやかな曲線で段差をつけた方が対応できそう。
(b)指を置く高さも人それぞれなので、飯碗の中ほどにつける「中ライン」と
高台に近い低い位置につける「低ライン」、この中間に位置するような
「中低ライン」の3つを用意する。
(c)しかし、ひとつの飯碗に、3つの段差ラインがついたのでは、にぎやかに
なってしまうので、コンセプトの「控えめ」とならない。
(d)飯碗には、それぞれ中ラインタイプ、中低ラインタイプ、低ラインの
3種類を用意する。
(e)段差面で、指先が当たる所にザラついた仕上げ面をつける。
ザラついたラインの幅は2~3ミリ程度に。
と、すべりにくい飯碗のデザイン仕様が絞り込まれてきました。
ここでは、拡散したデザインを、絞り込んでいきます。
個人ひとりで考えていると、ひとりよがりな部分もかなりあるので
デザイン仕様を決める場合は、見直して点検することが肝心です。
ちなみに、今回の(a)のところに書いた「ゆるやかな曲線」なんてのは
言葉の響きは良さそうですが、曲線にすると、指を当てる位置決めが
不安定になり、いちいち飯碗を持つたびに、どの位置だったけと
位置を探すはめになる。これは感心しませんね。
そうならないためには、ゆるやかな曲線ではなく、横から見たら直線に
した方が探す手間もなくなりますね。
ひとつの飯碗タイプに段差ラインを3本つけて、ピッチは6ミリぐらい。
そして、指先が当たる部分のザラ付き面は、2ミリぐらいの幅に。
このぐらいが良さそうな気がすると思ったら、「仮説」を立ててみる。
「段差を直線の3本」と設定したので、次には3本の段差ラインが美しく
見えるフォルムを探すためにデザインスケッチを描きます。
段差をつけると釉薬がそこに溜まり、段差の役目が弱まりますから
釉薬の溜まり具合を想定しながら、段差の具合や形状、ピッチを検討。
フォルムに関係するサイズはどのぐらいにするかなど、まだまだ飯碗の
新しいデザインに出会う旅は続きますが、ここまで進んで来ましたから
あと1週間ぐらいで出会えるでしょう。
今週の月曜、5日目にはデザインが完成するでしょうとは書いたものの
まだ途中です。予定は未定になってしまいましたが、今週から始まった
スケッチを描かないデザインワークはこれでひとまず終了となります。
最後まで読んでもらいありがとうございます。